錫の殿堂 薩摩錫器工芸館

薩摩錫器を知る

薩摩錫器を知る

鹿児島県を代表する伝統工芸品、薩摩錫器

薩摩錫器工芸館
鹿児島県指定伝統的工芸品 薩摩錫器
鹿児島県指定伝統的工芸品

「薩摩錫器」は、職人の高い技術と生み出される美しい光沢が特徴として知られる、大島紬・薩摩焼・薩摩切子と並ぶ鹿児島県指定の伝統工芸品です。

鹿児島県では、昔ながらの技術、技法で大切につくられ、一定水準を満たす工芸品を「鹿児島県指定伝統的工芸品」と定めています。

薩摩錫器はこれまでの長い年月、伝統的な製法を受け継ぎ、守りながら現代の生活様式にも馴染むよう、酒器・茶器・食器・花瓶・縁起物等の商品開発と製造が行われています。

何十年という修行からなる職人の技術が光る薩摩錫器は、ひとつひとつに職人の手がかけられており、そのずっしりと手に伝わる重み、伝統に裏付けされた重厚感と輝きから、長く多くの人に愛され、贈り物や記念品にも積極的に利用されています。

薩摩錫器360年以上の歴史

1.薩摩錫器のルーツは、1656年、八木 主水佑元信(やぎもんどのすけもとのぶ)によって谷山に錫山が発掘されたことに始まります。
錫は、人体に害がないうえに、融点が低く、加工しやすい金属であったことから、飲食器や工芸品、大砲の砲身に利用されるなど、幅広く利用されていました。
この発見は、薩摩藩に大きな利益をもたらすことになりました。

2.その当時、錫器は町人文化の中で高級感のあるものとして武家や商人の間で使われていたものと思われます。
庶民が生活用品として錫器を利用するようになったのは明治以降です。
技術の向上もあり、鹿児島ではどこの家にも何種類かの錫器があるまでに普及し、地域特性に根差した伝統文化となりました。

3.大正5年、国分で焼酎工場の蒸留冷却用錫管を手がけた弊社始祖の岩切登一郎は、息子登六を弟子入りさせて、錫器の世界へ門戸を開きました。
登六は錫器を日本を代表する工芸品に高め、1933年のシカゴ万博では、日本の多くの工芸品の中から唯一、賞に輝き、数々の展覧会に錫器を出品し、工芸品としての地位を確立しました。

4.その後、錫器製造は国分の地で子へ、孫へと引き継がれ、従来の「白地(磨き)」肌から、温かみのある「梨地」の肌合いを完成させ、さらにデザインに優れた「吹雪」技法など、現代的錫器の開発も手掛けるに至りました。
今日では、薩摩錫器工芸館として、伝統の薩摩錫器を受け継ぐとともに、日本の錫器技術を担う製造元となっています。

薩摩錫器とゆかりのある偉人

大久保利通(おおくぼ としみち)

大久保利通(おおくぼ としみち)

天保元年8月10日〜明治11年5月14日 (1830〜1878)

鹿児島生まれの政治家。西郷隆盛、木戸孝允と共に「維新の三傑」と称され、日本の近代化に力を注ぎました。
その大久保が愛用していたのが、錫製の茶壷。
100年以上の月日が経ってから発見された大久保の錫製の茶壷の中の茶葉の香りや味がいささかも損なわれていなかったというエピソードからも錫器の密閉性の高さがうかがえます。

薩摩錫器の製造工程

錫製品の美しい輝きや、重厚感、繊細さ、そして歴史的な背景に惹かれる方も多いのではないでしょうか。そんな錫製品は、一体どのように作られているのでしょう?古くから人々に愛されてきた錫の製造工程についてご紹介します。

原料・溶解

原料・溶解

国産錫は昭和40年頃には入手が困難になり、その以降、薩摩錫器工芸館では錫原料を国外から輸入し、使用しています。

錫の特長は、溶解温度が232度と比較的低く、鋳造しやすいこと。
作品の種類、大きさ、形状によって溶解の温度は異なっており、温度によって微妙に変化する錫の色を見分けるには相当な訓練を要します。

弊社では、溶解の適温は温度計などを使用せず、伝統的技法で全て溶解時の色のみで判断しており、その正確な判別には10年以上の経験が必要ともいわれる技術です。

鋳造・削り

鋳造・削りの様子

錫型の素材は、主に金型を使用。型の入口から錫の地金液をゆっくりと流し込み、数十秒後に型をあけますが、このタイミングは職人の熟練の業、経験、勘のみが司る重要な工程です。

鋳造によりできた一時製品は、表面を滑らかにします。その際、鉄加工品のような固く強力なものは使用せず、錫に合った装置に作品を固定し、ミクロ単位で削ります。これらは全て手の感覚で作業を進めます。削りと表面の切削は各1回の工程です。この技量の獲得には20年の経験を要します。

茶筒・茶壷加工

茶筒・茶壷加工の様子

茶筒・茶壷の製造・加工は錫職人が目指す最終点と言われます。「茶壺を作って一人前」とも言われているのです。

茶筒本体と中蓋、外蓋の大きさはそれぞれ100分の1ミリの単位で調整されており、ちょうどのサイズに収まるようになっています。茶筒の内蓋・外蓋を開けしめする際にきつくもなく、緩くもなく、茶筒の中の茶葉の品質が保たれるまでに究極の加減で削るその技は職人が手の感覚だけが知っているもので、その神業とも呼べる技術の修練には30年以上がかかると言われています。

錫のお手入れ方法

錫は「割れない・錆びない」比較的扱いやすい金属であるといえますが、より長く美しくお使いいただくための普段のお手入れ方法をご紹介いたします。

普段は他の食器類と同じく、食器洗い用洗剤と柔らかいスポンジで清潔に保ってください。

光沢が鈍ったときには、半練りの歯磨き粉を水でとき、柔らかい布・スポンジでふいてください。

歯磨き粉でも汚れが取れない時には、重曹を水でといて洗ってください。

その他、錫器の特長やお取り扱いに関する注意点はこちらからご確認いただけます。

メンテナンスを承ります

薩摩錫器工芸館では、弊社の錫製品を長く、美しく、大切にお使いいただくためにメンテナンス・修繕を承っております。

条件 薩摩錫器工芸館で製造された錫製品に限る
※確認方法
料金 有料
受付方法 一度お電話・メールで現在の錫器の状況やご希望をお聞かせください
その後、メンテナンス・修繕が可能な場合、錫製品を薩摩錫器工芸館にお持ち込みいただくか、郵送でお送りください
お預かり期間 製品の状況に応じて、数日〜数ヶ月お預かりさせていただく場合もございます

薩摩錫器工芸館で製造された錫製品の確認方法

錫製品底面にこちらの刻印が入ったものが薩摩錫器工芸館で製作した錫製品です。

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